PRODUCER

KENJI HASEGAWA

BBQのジビエを提供
長谷川 謙司さん
ジャパン・マルチハンターズ株式会社取締役 /
長谷川ジビエ精肉店店主

GEOSPOTでの滞在の楽しみのひとつ、ジビエのBBQセット。小田原に加工施設を持つ、長谷川ジビエ精肉店から、地元で捕獲され、丁寧に処理された鹿肉*を提供いただいています。
自然の恵みとして味わうこの食体験の背景には、近年小田原・箱根で深刻化する野生動物による課題があります。シカなどによる食害は、農作物だけでなく植生や森林環境にも影響を及ぼしています。
ジビエという旬のお肉の美味しさを伝え、食という価値へと変えながら社会課題をポジティブに解決していく。山と土地が近接するこの土地だからこそ提供できる、ジビエの魅力と意義について、お話をうかがいました。
*季節によって内容が異なることがございますが、旬のお肉としてお楽しみください

―事業内容を教えてください。

小田原でジビエの解体加工施設を営むジビエ専門のお肉屋さんです。お肉の提供から料理、お客さんの口に入るところまでを一気通貫でやっています。簡単に言えば 6次産業ですね。また同時にジビエを知っていただく、体験していただく機会を増やすために、狩猟体験や、解体体験といったワークショップも行っています。

―長谷川さんがジビエに携わるようになった経緯を教えてください。

2021年の11月から、このような活動を行っています。僕は元々料理人で、ジビエとの出会いは15年程前でした。
実際に狩猟の現場などを見学した際に、害獣による社会課題を、自治体や国だけで解決するのは難しいと感じていました。ボジティブに解決したいなと考えていたことがきっかけでした。
ジビエをメインとして提供し、旬のお肉や生産者さんからいただく食の美味しさを発信できる場所としてレストランを都内で経営していましたが、コロナ禍があってレストランと会社自体はいったん閉じることにしました。

―その後、立ち上げたのがジャパン・マルチハンターズ株式会社と長谷川ジビエ精肉店ですね。

レストランを売却して手が空いた時、やはりジビエをやりたいなと思いました。レストランでは、見える範囲の中でジビエを使って美味しいものを作ることはできますが、俯瞰的に見た時にジビエの食肉の流通にまだ課題があるなと感じていたんです。
それを解決するためには、処理施設や加工施設をやらなければと思い至りました。それにより、もっと安定的にレストランやホテルなどに扱ってもらえるようにしなければならないと考えました。

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―狩猟されるエリアはどのあたりなのでしょうか?

箱根から大磯、二宮のあたりの西湘というエリアも含みます。小田原を中心とした西湘エリア一体で活動されている捕獲団体と提携しています。
捕獲団体さんからは最短 20 分でジビエが届きます。ジビエを食肉にする際の国のガイドラインでは2時間以内に施設搬入ということが決められていることも考えると、小田原という山と都市が近い地形がメリットになっていると言えると思います。
内臓を処理したり、お肉にするまでの一次処理をいかに迅速かつ正確にできるかで、ジビエの品質が決まります。魚に例えると、神経締めや生け締めのように、一つ一つ丁寧に処理されたものが、その後のクオリティの維持につながって行きます。
臭みの原因になる内臓や、血の劣化をできるだけ抑えるため、いかに早くお肉と内臓と切り離すかが大切になります。切り離したあとは血も自然に落ちるので、落とせる分だけ落として、できる限り早く冷やし込むように注力しています。

―食感などに違いが出たりもするのでしょうか?

柔らかさを出すための熟成などはそこまでしないようにしています。というのは、鮮度のいい鹿肉を食べていただきたいという思いがあるので。割と万人受けしやすいジビエの味わいを意識しています。料理で引き算ができる、シンプルに素材を楽しめるジビエ、日本人の味覚に合った肉質のジビエを目指しています。
初めてジビエにトライする人や、そこまで鹿肉を食べ慣れていない方でも楽しめるような肉質で、子供も食べられるお肉です。

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―味わいの側面以外にも、今、熊や害獣の問題もあるかと思いますが、それらはいかがですか?

熊に関しては、かなり危険なので獲れる方も限られています。また、捕獲後にうちのように食肉にするための技術と処理施設が足りないことも、難しいところです。 弊社では、ツキノワグマやヒグマなどのほか、シカやイノシシ、小動物など合わせて今年は 700頭超のジビエを扱っています。それでも狩猟された動物の9割が廃棄ないし自家消費という形になっているのが現状で、ほぼ流通に乗らないということが課題です。
なぜなら、処理施設で処理したものでないと販売ができないためです。基本的には駆除することによって、ハンターは報奨金を得ることができますが、食肉にするまでの労力が見合わないことが多く、埋設や焼却処分になってしまうことの方が多いのが実状です。

―駆除だけで終わってしまい、食肉に回すまでに至らないことも多いのですね。そういった駆除での課題や問題などはありますか?

あります。シカなどを人間が狩猟する時、山の中で解体を行って、一部しか持ち帰らないことがあります。そうなると、その臭いに釣られて、熊も出てきてします。今までは植物性のものを食べていた熊も、食べ物が足りなくなるとそういったものを食べるようになってしまいます。また、山間地で人の食料や食べ終わったゴミを捨ててしまうとそれを食べるようになり、それにより人間の周りには食料があることを学習して活動範囲が広がってしまう。熊は天敵もいないですし、やはり一定数捕獲しないと、どんどんと増えてしまう一方です。

―小田原や箱根だと、シカが一番の問題ですよね。

そうですね。シカの生息数が多く、捕獲数も多いです。ある程度捕獲していかなければ、林業などもさらに衰退してしまいますし、山の生態系を崩してしまいます。
箱根は自然のアクティビティを楽しめる施設も多いですが、山道やトレッキングのルートの周りに植物が生えなくなってきています。 植林しても苗木が全部シカに食べられてしまうので、山が育たないんですね。山がそのような状態になってしまうと、山から海に続く川の栄養分が減ってしまい、最後は魚が取れなくなるんですよ。河口から来る栄養を求めて集まっていた魚が取れなくなってしまい、循環という中の一つの機転が失われてしまうという側面があります。

―その問題解決として、ジビエがあるのですね。

はい。この会社を創業メンバーである代表の並木と立ち上げる時に掲げた理念があります。「命をまるごと、身近に、豊かに」「美味しく、楽しく、社会貢献」の2つです。
いろんなレストランやホテルに扱ってもらえることで、一般のお客様にも届き、美味しいジビエをたくさん食べてもらうことにつながります。そこで、ジビエの美味しさを知り、また食べたいなと思ってもらえることで、ジビエを食べる機会を増やしていき、その土地の自然の恵みと人の営みの好循環を生み出すことを目指しています。
ジビエできちんと処理されたものは非常においしいので。また、ジビエで面白いのはお肉で唯一旬があるんですよ。普通のお肉に旬って感じないじゃないですか。旬の食材を料理人として追いかけていて、一番面白いと感じたのが、僕の場合はジビエだったんです。

―GEOSPOTに提供いただくのは、鹿肉のモモかロースがメインになりますが、季節によってどのような味わいの違いがあるのでしょうか?

顕著なのは、オスはフレッシュな青草が生えてくる春から秋の10月いっぱいぐらいまでは、青草をいっぱい食べて成長するので、脂がのった力強い味わいになります。大きい個体も取れるので、そういうものはもっと味が濃かったりします。逆に春の少し前は、メスだと出産前の時期でもあるので、乳牛のような、メスの和牛のようなミルクっぽい味がします。
このように、シカだけでも、季節、オス・メスの違い、個体の大きさでも味わいが変わってくるんですよ。ぜひ、GEOSPOTでも、春夏秋冬、何度でも楽しんでいただければと思います。

MOTOHAKONE | GEOSPOT
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