PRODUCER

SHIRO YAGO

朝食のオレンジジュースを提供
矢郷 史郎さん
矢郷農園 代表、西湘うみかぜふぁーむ 会長

GEOSPOTのBBQセットに含まれる新鮮な野菜やみかんジュースを提供する「西湘うみかぜふぁーむ」。所属する農家がつくるこだわりの食材をひとつにまとめて、小田原の魅力として届けていただいています。
また、「西湘うみかぜふぁーむ」は、農家の所得向上や新規就農をサポートする団体でもあります。高齢化に伴う耕作放置地の増加の問題を、横で連携しながらサポートし合い、未来へと農業をつなげていきます。
「西湘うみかぜふぁーむ」の会長であり、所属する農家のひとつでもある矢郷農園の矢郷さん、そして本団体の公式アンバサダーである大村さんにお話をうかがいました。

―GEOSPOTにご提供いただいているみかんジュースは、とてもこだわって作っていると聞いています。

会長を務める「西湘うみかぜふぁーむ」の仲間の加工場を使って作っているみかんジュースです。自ら作るからこそ、悪いものを省いて、おいしいものだけを抽出して作れるジュースなんですよ。
よそに頼むと、多少質が悪くても、「えい、入れちゃえ」って感じで品物ができてしまいますが、自分たちで作っているので、悪いものを全て省いて作っています。 おもしろいのが、1本の木のなかでも、おいしくなる場所とおいしくならない場所と、ひとつひとつ個体差があるんです。一応B品というものを使用しますが、B品の中にも見た目は悪いけど、味がいいものというのがわかるんです。なので、いくらジュースであろうとも、ちゃんと美味しいものだけを選別をしています。さらに皮を剥いた時に、虫に食われていたり、傷があって腐りそうなものは全て省いています。それにより、雑味のない美味しいものができあがります。
今お出ししているのは、清見オレンジを使ったもの。その時々で旬のみかんを搾って提供していきたいと思っています。11月から1月くらいまでは、温州みかん、早生みかんから始まって、青島みかん。 そして1月の後半から2月ぐらいにデコポンなどが出てきて、2月から湘南ゴールド。その後に清見オレンジが出て、カラマンダリン、カラマンダリンの後にバレンシアオレンジが出るっていうのが、うちの主要商品のサイクルです。

MOTOHAKONE | GEOSPOT

―矢郷さんは、柑橘を中心に生産していますが、栽培方法や、この土地ならではの特長はありますか?

地形ですね。ここは、ほぼ全てを手作業でやらないといけないぐらい急斜面で、さらに石垣もあります。
トラクターなどが入らないので、ギリギリのところを登ったりしながら作業をしています。 場所としては過酷なところではありますが、勾配がある代わりに水はけがいい土壌です。フルーツにも過酷な環境ですが、そのような環境をフルーツに与えると実が美味しくなると言われています。水分不足になるので、水っぽくならずに味が濃く出るんです。
さらに、目の前が海なので、潮の塩害があるのですが、そこで身を守ろうとして美味しいものが出来上がります。柑橘類は海沿いが美味しいと言われていますよね。熊本や和歌山、愛媛とか愛知、静岡も全て海沿いです。地形による恩恵っていうのが、柑橘の場合はとても大きいです。
ただ、昨今難しいのが、温度が高すぎるのか、みかんの木が急にバサッと枯れる現象が各地で起こっています。 暑くなりすぎて、出来上がったみかんの味も水っぽい。昔は熊本あたりのみかんが最高に美味しくて、三ヶ日あたりがまだ酸っぱく、小田原なんかは超酸っぱいという印象でした。小田原のみかんが有名になったのは、その美味しさというよりは、みかんが栽培できる北限のぎりぎりということだけだったんです。でも今は温暖化によってどんどん北にずれていって、山形でもみかんができると言われていますね。今は三ヶ日や小田原のみかんが一番おいしいと思っています。

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―畑を拝見すると、キウイも多く栽培されていますね。味もとてもジューシーでした。

キウイフルーツは、与える肥料にこだわっています。100%有機物の肥料を与えることで、実が美味しくなっています。農薬などは基本的には使いたくないと思っていますが、少なすぎるのもよくないので、スポットで年間に一回から二回だけ使っています。減農薬で有機物の肥料をたくさんあげるという特別栽培でやっています。
また、キウイフルーツに関しては追熟がうまくいっているかどうかで味が全然違うんです。収穫したばかりのキウイは石のように硬く、渋くて食べられません。これを暖かい部屋に置いて、エチレンガスを与えて、一週間ぐらい温めます。 そうすると少し柔らかくなって、二週間後ぐらいに食べごろになります。例えば、ご自宅でフルーツ籠などにフルーツを置いておくことがありますよね。風にさらされて、水分が持っていかれて、柔らかくはなりますが、柔らかいというよりは萎れて、パサパサして酸っぱい感じになります。なので、僕たちはこちらで追熟をして、食べごろの状態で商品を提供するようにしています。
今はキウイフルーツを使ったフルーツソースを作るなど試作を進めています。GEOSPOTでもこれを使ったラインナップを提供できたら面白いですよね。

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―矢郷さんは、どのようなきっかけで農業を始められたのですか?

もともとはラーメン屋でした。 兄貴と二人でラーメン屋をやっていたのですが、原発のあと計画停電をしている時期があって、その時に店が傾いて、それをきっかけに2011年3月31日にラーメン屋を辞めて、4月1日から農家になりました。うちの奥さんが実家でみかんを作っていたのですが、そろそろご両親が歳だから辞めるという話をしていたので、僕に手伝わせてもらえないかと頼みました。

―どのくらいの規模感で始めたのでしょうか?

当初義両親から引き継いだのは2500坪くらいでしたが、周りで農家を辞めてしまう方が多く、その畑を引き継がせてもらう形で、今はこの辺に点在する形で40箇所24000坪まで広がっています。東京ドーム1.7個分くらいになりました。
柑橘農家というのは、新規でゼロから始めた場合、実際にお金が手元に入るまで5年以上はかかります。それでもやっと実がぽつんぽつんとできる程度で、10年ほど経って大きな木になった時にようやくまとまった収入が得られますが、それまではほぼ無収入です。新規で柑橘を作りたい人が耕作放棄地を起こして苗を植えようというのは、現実的ではないです。ある程度の地盤やお金があった上で、ここに新たな苗も植えてみようというのはいいのですが、なかなか農家が辞めるタイミングで、そのまま引き継げることも少ないです。そんな辛い現実があるので、辞めると聞いたら、僕たちは手を挙げて、年間3000坪ぐらいを起こし続けて来ました。

―GEOSPOTでは、みかんジュースのほか、矢郷さんが会長を務めていらっしゃる「西湘うみかぜふぁーむ」に所属する農家からの旬のお野菜も提供していただいています。団体について、少し教えていただけますか?

はい。僕たちは、八百屋ではなく農家の集まりなので、自分たちの生産物に責任を持っています。なので、同じ目線を持っていただける方と、お取引させていただいています。 目的の一つが、農業者の所得向上です。昨今耕作放棄地の増加が課題となっていますが、農業者の平均年齢が80歳ぐらいなので、みんな辞めていくんですよね。 月単位でここも空いた、あそこも空いたってなっているような状態で。でも所得を上げられれば、絶対に放棄地も減っていきます。 今は、農業者は全てをやらなければならず、負担が多い割に儲からなくなってしまっています。 昔は生産して、そのまま農協や市場に出荷っていう形で賄えていたのですが、今はそうはいかない。生産して、営業して、宣伝して、販売までを全部一人でやらなければならないんです。でも、農家はどちらかというと堅物で無口な人が多いですからね。 なので、「西湘うみかぜふぁーむ」では、営業できる人が営業して、「こんな話があるんだけどやらない?」と、農家を巻き込んでいっています。こういった活動を通じて少しでもみんなの所得が向上していけばいいなと考えています。

―若手の方の就農支援もされていると聞きました。若手の方の所属が多いのでしょうか?

ベテランは僕を含めて4軒ぐらいで、あとの4〜5軒は新規就農者や、始めてまだ間もない方が多いです。今の農業って本当に厳しくて、みんな辞めちゃうんですよ。 新規就農なんか特に。トラックも機械も、収穫したものを入れる籠もないし、それを置く場所もない。何もないんですよ。初めは情熱で頑張るんですが、儲けも少なく、段々と心が折れてきてしまう。
「西湘うみかぜふぁーむ」は、そういった心持ちが良くていい人たちなのに、続けられなくて辞めざるを得ない状況の方々を支援するためのチームなんです。例えば、機械やコンテナを持っていって貸したり、あげたりだとか。 そんなふうに、みんなで横の助け合いをしています。
これを解決するために、農家になりたい人を少しでも増やすという活動をしています。 小学校や中学校の職場体験もやるし、高校で授業もやるし、農業アカデミーで講師もやるし、農業に興味を持ってもらえるように、いろんなところに行って話をしたりします。そして、いざ農業をやろうという人が出てきてくれた時に、一緒にやろうよと声がけをして、僕たちのチームで迎えられたらと思っています。それでうまくいって大きくなれれば、一緒にいろんなことができるようになるかなと思っています。

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―農家の所得向上や新規就農への支援、未来へと農業をつないで行くための活動ということですね。GEOSPOTのような宿泊施設に野菜や果物を提供していただくことに関しては、どういう意義を感じてくださっていますか?

僕たちは、すごくこだわって野菜や果物を作っていますが、なかなか試してもらう機会がないんです。生ですぐその場で食べられるものであれば、食べてみて、おいしいからもう一個買ってみようとなるかもしれませんが、後から家で調理して美味しくてもそれで終わってしまう。
そんな中、宿泊施設でBBQをして、その美味しさに気づいてもらえたら、もしかすると帰りにどこかで買っていこうとつながることがあればいいですね。それが所得向上にもつながっていけばと考えています。

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「西湘うみかぜふぁーむ」の公式アンバサダー、
大村奈津美さんにもお話を伺いました。

―矢郷さんにもお話を伺いましたが、所属する農家の野菜や果物の魅力を広める活動を、アンバサダーとして推進されているのですね。

はい。小田原はすごくいい場所なのに、まだまだ知られていない魅力が多くあるので、それをアピールするために、マルシェという形の活動などもしています。

―「うみかぜふぁーむ」さんには、どのような農家が所属されているのでしょうか?

みんなそれぞれ特性が違っていて、果樹園もあったり、野菜もあったり、キクラゲがあったりとか。農家が幅広く所属しているので、自分たちだけではなくて、みんなでまとまった方が種類も揃うし、お客さんへの印象づけにもなるよねって思っています。やっぱり一つの農家だと、作っているもの自体が限られてしまうので。
一つの団体として活動することにより、「メンバーにこういう野菜を作っている人がいますよ」とご紹介することができます。また、一般的な農家は農協に納めて出荷する流れですが、「うみかぜふぁーむ」に所属する農家は、農協に卸さず、自社と飲食店さんと直接やりとりをします。間が入らないからこそ、お互いに無理のない金額設定で取引ができるというメリットがあります。
例えば、矢郷さんだと、ミカンの木も一つ一つ味見をして、美味しいものだけ収穫して出荷する。ばらつきがあっても、酸っぱいものなどは入れたりしません。そういったこだわりを持った農家が所属しているので、飲食店やお客様から信頼をされているという部分もあります。

―GEOSPOTに野菜を卸していただくことに関して、いかがですか。

箱根は比較的小田原に近いため、新鮮な状態でお届けできるねという話になり、お取り引きすることにもつながりました。小田原の食材をお客様に知っていただくきっかけになればと思っています。